2012年7月11日水曜日

LIBOR問題

ひさしぶりのエントリーは何やら大騒ぎになってそろそろ飽きられつつあるようなないような感じもしつつある、LIBORが操作されてた云々のお話。

既に英バークレイズのCEOが辞任、ドイツ銀行も当局の調査、UBSやCSに当局が接触、三菱UFJは在ロンドンのトレーダーが停職、などなどと報じられてますね。

バークレイズ1行で終わらない、LIBOR問題調査-FSA(Bloomberg)
てなもんで当局の鼻息も荒いですなぁ。

コトの発端はここいら界隈↓でしょうかね。
バークレイズ:ダイアモンド氏と英中銀の通話メモを公開(Bloomberg)
”それによると、市場担当ディレクター(当時)のタッカー氏はダイアモンド氏に、バークレイズの報告するロンドン銀行間取引金利(LIBOR)がなぜ最も高い水準の範囲に入っているのかを尋ねる電話を多数の政府高官から受けたと伝えた。”
”デルミシエ氏はLIBORを高水準で維持しないよう英中銀が指導したと受け止め、そのように金利報告担当者に指示したという。”

からの、このような報道↓も
英中銀副総裁:バークレイズへの指導で政府高官から圧力ない(Bloomberg)
”イングランド銀行(英中央銀行)のタッカー副総裁は、金融危機時にバークレイズなど英国の商業銀行に対しロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を故意に低めに報告することを指導するよう、どの閣僚や政府当局者からも圧力を受けていないと述べた。”

何やら既にめんどくさいかつ色々とふじこlp;@なニオイがしますね。


そもそもLIBORとはLondon InterBank Offered Rateの頭文字を取ったもんです。
つまりはロンドンの銀行間市場において貸し手が提示する金利。ちなみに無担保ベースです。日数計算は実日数/360で計算します。10通貨について算出されてます。
これ以上の誰得マニア情報はbbalibor.comをご覧いただくとして、要するに銀行さんが他の銀行さんに「お金貸してくれーぃ」とお願いしにいった時の資金調達金利であり、短期金利の指標的な存在として認識されています。

2番目に挙げたニュースで「バークレイズが提示するLIBORが高い」をことに指摘が入っていることはすなわち、「バークレイズがファンディングに苦しんでいるのではないか」と思われることに対するツッコミという意味合いを持ちます。時はリーマンショック直後。第2第3のリーマンはどこだ、と不安になり”疑心暗鬼”という言葉がマーケットを覆っていたときのことでした。




リーマンショックを挟んだ時期の6ヶ月LIBORの比較。バークレイズの提示レートのほうがBBA集計の平均よりちょっと高いのが見て取れます。




BBAレートを基準にしたバークレイズのレートのスプレッド。3回ほどハネ上がったあと休息にスプレッドが縮小していますが、この時期に、英中銀市場担当ディレクターのタッカー氏(現副総裁)がバークレイズに直撃お電話をしたとかしないとか。


ところで、こういったニュース↓もあるわけでして
英中銀副総裁、バークレイズ債のプライシング高いと指摘=メール(Reuters)
”タッカー副総裁は08年10月26日に、バークレイズの政府保証債が英国債利回りに焼く140ベーシスポイント(bp)上乗せした水準で発行されたことに言及する題名でダイアモンド氏に電子メールを送り、メールの本文で「それは高い」と指摘した。”


「おたくんち、LIBOR高くね?スプレッド厚くね?金融システム不安煽らんでくれよチミぃ」
「やっべー怒られちったよー。とりあえずLIBOR低くすんべー」


ざっくり言ってしまえばこんなやりとりがあったんだかなかったんだかということですね。
例えば銀行の信用リスクをはかるのに同期間の短期国債とLIBORのスプレッド(TEDスプレッド)を見たりしますが、その為のLIBORが操作されてあるべきリスクが織り込まれていなかったとしたら。。。と考えれば確かに不正操作ではあるわけですが、ここに中銀やら政府やらが登場してくるから非常に面倒。しかも世界中の金利の指標たるLIBORがその対象でありまして、「じゃ、別のもんに替えるわ」なんつぅわけにはいかん(この辺は今後、訴訟等々から訴求して再計算して云々なんてことになるんでしょうかね…)わけでさぁ大変。

しかしそもそも金利なんていうものは、相手によってもタームによってもサイズによってもその他諸々の環境によって千差万別なものでして、またときに「ムラ社会」などども言われるように、ある意味では阿吽の呼吸で成立してるマーケットでもありまして。
金利村に何年も住んでればその辺の感覚勘所はなんとなくわかるけど、外から見たらアヤシゲなものなのでしょうねぇ。

落ち着きどころはどこになることやら。。。


最後に、合わせて読みたい的にのご紹介
次の舞台:Tori Box http://ttori.exblog.jp/17733670/