2011年4月5日火曜日

債券レポ-SC編-

ふたつのレポ、GC編に続いてSC編です。レポの話としてはこちらが本丸かも。
SCとは「Special Collateral」の頭文字をとったもの。前回の冒頭で触れたようにモノありきのレポ取引です。

結論から言えば「空売りする為の現物債を借りる」取引です。株式同様、債券を空売りする際には誰かから売る為のモノを借りてこなければいけません。モノを借りる為にレポ取引を利用するわけですが、ここでは貸借取引の対象となる債券の銘柄が特定されています(#313を50億借りたい、とか)。よってSpecial Collateral。

ショートする人は必ずモノを借りるか買い戻しで踏まなきゃいけないわけですから、SCにおける仕上がりのレポレートはGCに比べて低くなります。とだけ書いてもワカランチ会長だと思いますので説明を。

『レポレート=現金担保に対する付利金利−債券の貸借料』であるいう話は前回もしました。より正確に言えば、レポレートは現金担保に対する金利と債券の貸借料のバランスを反映して決まるわけです。
GCは資金の運用・調達マーケットですから、品貸しに大きな意味はありません。しかし、SCはモノの貸し借りのマーケットですから、付利金利に対する貸借料のウェイトがGCに比べて高くなります。「銘柄何でもヨシ」ではなく「その銘柄貸してくれ!」なわけですから当然ですね。

需給が逼迫した銘柄の場合、レポレートがマイナス金利になる場合もあります。レポ取引では、債券の借り手からすれば現金担保を差し出して付利金利を受け取るとともに債券を借り入れて貸借料を支払うわけです。需給が逼迫した銘柄の貸借料は高騰します。付利金利<貸借料となるまでに需給が逼迫すれば、その銘柄のSCレポレートは結果としてマイナスレートになるわけです。ギョーカイではこの状態を「ネガティブ」といいます。
大口の買いが入ったとか、貸借料高騰狙いで誰かがガメたとか、入札前にリオープンを見越して売りまくってたら相場が動いてリオープンしなかったとか、そんなときに起こる現象です。

以前にも入札に絡めて書いたことがありますが、入札前はプライマリーディーラーを始めとする業者は入札対象近辺の銘柄に売りを入れることが多くあります。売るからにはSCで借りなければいけません。が、多くのディーラーが借りにくるわけですから、入札対象近辺の銘柄の貸借料が高くなりがちです。
以前は、2年債以外の国債は毎月20日が発行日とされていました。10年債は毎月初旬に入札が行われるわけですが、それに前後して空売りされた既発債や入札時にショートのまま発行までに買い戻しが済んでいない新発債については、貸借料が上記の理屈で高騰しがちでした。入札日から発行日までの相場変動があると思ったように買い戻せなかったりするわけです。
これを防止するため、国債の償還がある3、6、9、12月を除いては、国債入札日の3日後(T+3)の発行に変更されました。上記リスクを減らそうという意図ですね。3、6、9、12月は20日の発行日を維持したのは償還資金流入による円滑な国債発行消化を重視したためと推察する次第。

毎度、取り留めのない文章ですが、SCってのはこんな感じです。大人の事情で書けないこと山盛りのマーケットですので、これ以上の話はオフの場でw

2011年4月2日土曜日

債券レポ-GC編-

債券レポはモノとカネをやり取りする取引であるということは前回のエントリに書いた通り。そして債券レポはSCとGCというふたつの形式に大別されます。ざっくり言うと、前者はモノありき、後者はカネありきの取引です。

今回はGCについて。
GCとは「General Collateral」の略でして、基本的には資金の調達・運用のマーケット、もっと言えば保有在庫のファンディングマーケットだと理解しています。

証券会社を例に考えてみますと、彼らは多くの現物債を在庫として保有しています。投資家さんが買いにくるであろう玉を在庫に仕込んでおいたり、売り注文を受けて取ったけど売却してなかったり。その為の資金は100%自己資金ってわけじゃあない。銀行からの借入金だったりレポやコールでなんかで資金調達してくる必要があるわけです。超大雑把にいえば信用取引みたいな構図。
てことで、現金担保付債券貸借取引という仕組みを利用して、逆に、債券を担保として使って資金を調達しようとうニーズが出てくるわけでして、これがGC取引。

担保玉は何でもいい、というのが最大の特徴です。実際は国債(JGBおよびTDB)しか使えないんだけど、やりとりする現金と債券が同額であれば銘柄は問わないということです。故にGeneral Collateral。

取引形態はT+2スタートのオーバーナイトが中心ではないかと思いますが何のこっちゃ(°Д°)ハァ?だと思いますのでご説明。

債券売買においては通常、約定日の3日後に受渡決済が行われます。そしてその約定日の翌日に保有債券の残高と資金過不足を確認して、必要に応じてGCで資金調達しにいくわけです。売買約定日の3日後=売買約定日の翌日の2日後で、売買約定日の翌日=GC約定日、という理屈。

つまりですな

来週で言えば、4/4約定の売買は4/7に受渡決済。で、4/5になって資金過不足を見たところどうも4/7時点で資金が足りない。んじゃぁ4/5約定のGCで在庫の債券使って4/7の資金を調達しましょうね、ということになる。
GCレポの約定日(Trade date = T)の2日後(T+2)にスタート(レポ取引の受渡決済)するGCが中心になるのはこういう背景なわけです。日銀の資金供給オペもT+2スタートが多いのは同じ理屈だろうねぇと推測する次第。
で、保有債券なんて次の日には売っちゃうかもしれないしまた増えちゃうかもしれないから、GCは翌日物の取引がほとんど。さきほど「T+2スタートのオーバーナイトが中心」と書いたのはそういうわけです。

ちなみにギョーカイではT+1スタート翌日エンドを「トムネ」、T+2スタート翌日エンドを「スポネ」と呼ぶ。また、月末スタート翌日エンドを「末初(まっしょ)」と呼ぶ。末初が読めればもう短期市場は制したようなものです(違

レポでは仕上がりのレポレートで気配出して取引するわけですが、GCでは品貸しに大した意味がないので貸借料は0.01として、現金に対する付利金利をレポレート+0.01で計算するのが慣行。レポレート0.11だったら付利0.12の貸借料0.01、という具合。債券を時価で評価して経過利息を含めて計算した受渡金額が現金担保の額。そこに金利かけて貸借日数分の利息だして、付利と貸借料の差引の金額を現金担保に足し込んで貸借取引を行います。

金利形成としては、通常は無担保コールO/Nの誘導目標からロンバート貸出の間で、その時々のマーケット全体の資金需要で動く。現状では誘導目標は0〜0.1のレンジだけど、当預の超過準備に0.1の付利があるから基本的には0.1が下限。資金の出し手からしたら、日銀に置いとけば0.1の金利もらえるんだから、取引やら事務やらコストかけてカウンターパーティーリスクとってまで0.1以下のGCで運用するニーズないじゃんという話である。

ただし、資金の出し手の中には超過準備付利をもらえない人たちもいるわけでして、昨今の大量資金供給当預40兆円攻撃(ドラめもんさん風)を受けて、そういう皆様が余資運用のために半ば涙目になりながら足元で0.08とかでGCに資金出してきてるわけですが。資金調達サイドとしては助かるは助かるんだけど、彼らのような出し手までやる気失ってカネ取れなくなると一発サヨナラ資金ショートに陥るので何ともアレではあるのですよねぇ。
ちなみにリーマンショックの時はカウンターパーティーリスクが意識されてというか要するに疑心暗鬼が蔓延して誰も資金を出さなくなって、GCのレベルがロンバート貸出の遥か上空まですっ飛んでったわけですが。
金利って、お金の値段なんですなぁ。

GCってこんな感じです。ニュースなんかで「日銀の潤沢な資金供給を受けてレポレートが低下」とか書かれるのはこのGCのレートのことだと思ってよいでしょう。レベルの指標としては東京レポレートというのが日々公表されてますのでマニアックな方はご覧ください。



長ぇなw