2012年2月23日木曜日

妄想:20XX年

足元、ドル円で3桁に迫る円安の進行を好感し、日経平均株価は20,000円が射程圏内に入っている。長期金利は細かな上下を繰り返しながらも1%台後半へと上昇、なおその基調は続いている。2000年代後半にギリシャを発端として勃発したソブリン危機は各国中央銀行の流動性供給政策を受けて鳴りを潜め、市場は日を追うごとにリスクオンの色を強めていった。日本国内のマーケットでは、確かにそう見えていた…。



なんてのはまぁ3秒で思いついたフィクションです。


欧州発のソブリンクライシスが叫ばれて早数年。最近ではJGB暴落論も若干ささやかれていますね。まぁ外野を中心としてね。色々とアレな論調も多いわけですが…。


JGBのクレジットが崩れたときって何が起こるだろうか、なんてふと妄想を働かせて考えついたのが冒頭の文章です。

JGBの信任が崩れるのと利上げとどっちがどうだと言われると、どちらかというと前者の方が早そうな気がします。全くの当てずっぽうだけど。そのとき市場参加者は何を考えるのか。


「長いゾーンが安い。デュレーション長期化じゃい!」


足元金利の低位安定という前提が変わらなければ、市場はこのように考えるんじゃないかなぁ。冒頭に書いた長期金利の描写、「細かな上下を繰り返しながら」などとわざわざ入れたのは、前提が変わらずに相場が下落したときって、まずはナンピンチャンスに見えるんじゃないかという感覚があるからです。市場の住人としてのバイアスがかかった考え方かもしれませんが。

これまでにHFなんかがJGB下落に賭けたポジションを組み、その度に返り討ちにあってきた歴史はわりと有名だと思います。JGBは内国債で国内には1500兆円の金融資産があるし、その9割以上を国内でファイナンスしてるし、日本は経常黒字なんだから安泰でしょという話もよく聞きます。経常収支に関しては最近ちょっと怪しさがでてきましたが…。

さて妄想の続き。

実はこの円安も金利上昇も日本に対する信任の崩壊が原因だったとしたら…円安を材料にした株高は実はダマシで、トリプル安に突入するとしたら…。
その時々を見れば、債券市場的には押し目買いチャンスがちょいちょい来てるように見えたかもしれない。でも気付けばだいぶ金利上がってきたよね…。


的な。


頭の体操として、こういった事態を想定するのって、結構楽しいと思うんですよね。金融バカとしては。

しかしなんかこう、金利村の住人の端くれとしては、あまり冗談ではなさそうな気がするんだよなぁ…。年末にも書きましたが、JGBの寿命って少しずつでも確実に縮まってるような気がしてます。

何とかなってるうちに、何とかしないと、どうにもならなくなりまっせ。

2012年2月14日火曜日

Tdex+炸裂

いつかは見ると思ってましたが、いざ見ると一瞬何が何だかわからなくなりますね。まずはチャート。


(出所:http://n225cme.com/jgb.html

JGB先物の5分足です。それまでのローソク足が無意味なほどぶっ飛んでるのがよくわかりますね。


(出所:http://n225cme.com/jgb.html

日足はこんなこんな感じです。どことなくビームサーベルに見えます。

タイミングとしては、日銀金融政策決定会合で10兆円の基金増額が発表されたちょっと、後でした。追加緩和策を出してきたのはちょっとしたサプライズではありましたが、これ単品では先物を70銭とか吹っ飛ばすような破壊力のシロモノではないです。

BOJ発表直後からじりじりと買われ、おうおうまだ買うかね、と思ったところで一瞬で値がすっ飛んでいきました。板はボロボロスッカスカ。付いた高値は143.37。前日比+1円ということで久々のサーキットブレーカーかと思いましたが、きっちり1円高を付けてストンと下げたので、今回はなし。後から歩み値を見たら10銭とか普通に値飛びしてました。

Tdex+炸裂であります。

こんな値動きでまず疑うのは誤発注ですが、その可能性は薄いのではないかと思いました。というのは、Tdex+システム導入当初から話題になっていたことですが、成行でドカーンと注文入れても制限値幅(20銭でしたっけ?)に達すると、未出来が自動的にキャンセルされるという謎システムだからです(株のシステムがベースですので、流動性薄い銘柄へのインパクトを抑えるための配慮と推察)。

ここからは推測の域を出ませんが、日銀の発表を受けて中期あたりからゴリゴリ買われて、先物を売ってた人達が踏みにいって、ついでにオプションやってる人達が踏みにいって、上の方に冷やかしで入れてた売り指値が付いて更にストップロスに引っかかって、という感じで連鎖したんではないかと思います。コールオプションの値段も跳ね上がってました。

わざわざご丁寧に(?)東証から債券先物が急騰場面、東証「誤発注ではないと判断」なんてコメントもでてますねぇ。

強烈な体験でした。あの急騰を叩きにいったとしても、約定する値段はいくらだったんだ、と。正直、人間がついていけるスピードではない。ついでに言うと、現物のはわりとマイペースに気配が強くなっただけでしたw 先物が明らかに異常値でしたから、様子を見てたってのもあるかもしれないですけどね。スピード感があまりにも違うことを実感します。

想定していたこととはいえ、実際に見ちゃうとなかなかのものがありますね。これで先物の流動性落ちちゃったら、去年のTdex+導入前の杞憂が現実のものに…。

2012年2月13日月曜日

【書評】ゼロ金利との闘い

ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する
植田 和男
日本経済新聞社
売り上げランキング: 229843

90年代後半から2000年代央にかけての金融政策についての、ちょっと論文めいた一冊。

折からの金融経済環境に対応してきた結果、金利の上下操作という伝統的金融政策の自由度が失われてきたことと、不良債権問題等々を抱えた金融機関の資本制約による金融仲介機能の低下、という2つの課題に直面しつつ日銀が取ってきた金融政策運営上の苦悩。

バーナンキ&ラインハートの論文を引き合いに出し、ゼロ金利下での一段の金融緩和政策として①時間軸政策、②特定資産の購入、③B/Sの拡大を議論しているのが印象的。その中でも特に時間軸政策についてページ数を割いて解説している。
名目の金利に引き下げ余地がなくなり、時間軸を延長、その結果としてのリスクプレミアムの圧縮。これってまさに今起きてることじゃないか。

リーマンショック時に、流動性の枯渇やクレジットの爆発を経験したわけだけど、その後の構図は、本書の議論とあまり違いはないのだなぁ。政治がプアで政策効果が減衰されてしまったとさりげなくdisってる(ように読めるw)のも、今と変わらんですね。

中銀ヲチャーの端くれとして、手元に置いておきたい一冊です。

2012年2月4日土曜日

映画「マージン・コール」(ちょっとネタバレしてるので要注意)


DVDがリリースされたようなので、早速観てみました。
オフィシャルサイトはこちら→Margin Call | Official Site


「Be careful.」

この一言から始まる壮大な金融パニックストーリー。



…じゃないです、全然w
というか、そういう風には描かれてない、という感じ。


舞台はウォール街の投資銀行、ネタは住宅ローン債券のMBS。観てればわかるんですが、どことなくリーマンをモデルにしてる感があります。

アセットを過剰に抱え込み、価値が目減りすると会社を吹っ飛ばすほどの損失がでることがわかってしまったのでさぁ大変。エラいさんが集まって夜通し会議した結果、全てのポジションをブン投げるという苦渋の決断を下す。そのプロセスが話の本筋です。

全体通してピリッとした緊張感が漂い、一気に観れちゃいます。某お金は眠らないウォール街映画とは違ってそこがいいですね。キャラクターそれぞれが結構な社畜感を醸し出してるのも、いい感じですw

でも、マーケットに大混乱をもたらすであろうブン投げシーンはもっと盛大に描くべきじゃないかな、と思いましたね。ものの数秒であっさり終わっちゃって、それまでの緊張感がきれて、尻すぼみにエンドロールが流れます。ラストは「えぇっ!?」って声が出ちゃいました。ハゲタカのクライマックスぐらいの雰囲気が欲しかったかな。


金融屋としてはヒリヒリするような緊張感を映画として楽しめましたが、まぁこれは一般公開はされないわなぁという感じw

予告編冒頭に出てくるリストラされちゃうおっちゃん、どことなくバーナンキに似てる気がするのは気のせいでしょうかね。あと主人公というかサイエンティスト上がりのアナリストが、パックンに似てる。結論としては、デミ・ムーアロング。