2011年3月27日日曜日

債券レポ-導入編-

Twitterでやたら期待されたレポの話を書いてみましょうか。
ここでいうレポとは債券貸借取引のこと。Repurchaseが語源とされていますがなぜか「レポ」と呼ばれてます。「リパ」じゃん、と言われてもおじさん困っちゃうので突っ込まないように。てゆーか売買じゃないしね。貸借だしね。

債券屋のバイブル「債券の基礎知識」によりますと、日本における債券貸借取引は1989年5月から無担レポを中心にスタートしたそうです。つまり担保を取らずに債券を貸し借りする取引ですね。しかしながら無担保取引であることのリスクが指摘されることとなり、現在では有担保の取引が中心です。特に現金担保付債券貸借取引。代用有価証券も担保になるはずだけど個人的にやったことがないのでとりあえず無視ですすいません。

ちなみに無担保のリスクが指摘されたのは、最近また名前をよく見かけるようになったベアリングスの破綻と思われ。彼らが無担保で借りた国債をまた別の担保に差し入れたまま逝っちまったもんだからエラい騒ぎだったそうです。考えたくもないですなぁ…。

ということで、ここでは基本的に有担レポ、特に現金担保付債券貸借取引について書きます。

現金担保付債券貸借取引とはその名の通り、現金を担保として債券を貸し借りする取引です。
債券の借り手は担保として現金を差し出して債券を借り入れるとともに債券の貸借料(レポ料)を払い、債券の貸し手=現金担保の取り手は貸借料を受け取りつつ受け入れた現金に対する金利(付利金利)を払います。付利金利と貸借料の差し引きの金利をレポレートと言いまして、これを気配として提示することにより取引を行うわけです。
このことからもわかるように、レポ取引は債券の貸借という側面と、資金の運用・調達という側面を持ち合わせています。ここ重要。

なお、「A Day In The Life」さんというブログにわかりやすい図入りのエントリがあったのでリンクしときます。あとはここを読んでねヨロシクと言いたいぐらいわかりやいエントリです。また、セントラル短資さんのサイトの中の債券レポ市場なるページもまとまっていてわかりやすいですね。

尚、現金と現物をやりとりする取引として現先取引というものがあります。空売りするのに現物を調達する必要があることは以前にも書きましたが、レポ市場が整備される前は買現先でモノを調達していたのかな。

そういったマーケットがあったのになぜ債券貸借取引が発達する必要があったのか、という疑問がでてくるわけですが、そこには今は亡き有価証券取引税の存在があるわけです。その昔は有価証券の売買そのものに税金がかかってたのです。利益が出たかどうかはにかかわらず取引自体が課税対象。現先売買ももちろん課税対象。
そこで貸借取引ですよ。これは消費貸借契約ですから、有価証券取引税の対象にはならないという判断だったのでしょうね。有価証券取引税は1999年に廃止されましたが、そうして発展してきたのが日本の債券レポ市場なのです。

うん、長くなりました。


本当はGCマーケットについてまでを書こうと思ってたのですが、あまりに長くなりそうなので今回は”導入編”でやめておきます。とりあえず、レポとは「債券と現金を交換する取引である」ことと「貸借料および付利金利の授受がある」ことだけご認識ください。
次回以降は2回に分けて、GCとSCについて書こうと思います。うん、思います。たぶんね。

2011年3月13日日曜日

地震とマーケット備忘録

2011/3/11、東北を震源とする大地震をきっかけに北関東や新潟でも地震が断続的に発生。津波も発生して被害はどれほどのものになるのか見当もつかない現状です。
当日は一度は徒歩帰宅を考えましたが、結局は当社からもほど近い知人のオフィスの会議室で飲み仲間とともに夜を明かし、交通の回復を待って翌日に帰宅しました。

さて、地震の第一波を受けたのは後場の商いが引ける手前でした。すぐにやむだろうと思っていた揺れは次第にその大きさを増し、窓とブラインドがぶつかってガタガタ鳴るわ、モニターは倒れてくるわ、ちょっとした騒ぎになりました。

常備してあるヘルメットを初めてかぶり、デスクにしがみつきながらも板を見ていると、JGB現物が買われる約定音が日本相互証券(BB)の端末からキンコンキンコン鳴り響き、先物には買い物が殺到する状況でした。

その状況をとらえた5分足チャートがこちら↓(出典: http://systemtrade-life.com/wcharts/ )


限月交代直後、週末を控えた15時引けを前に、138.80台で死んだように横ばいを続けていたJGB先物が急騰した様子がわかります。

地震発生からしばらくして、BBを始めとするブローカー各社は現物債の売買を停止したましたが、東証は先物の売買を止めませんでした(この辺りの判断はTwitterでも話題になりましたが難しいところですね…)。ディーラーが現物ショートのヘッジで先物を買ったのかもしれません。しかし、それだけではあんな急速に1円以上吹っ飛ばすとは思えない。もちろん私個人の感覚ですが。

思うに、株等とのインターマーケットトレードを含むJGB先物ショートのストップロスアルゴの買いが入ったのではないかと。大証クローズ後にはSGX225が10000割りにいく状況でしたし。まぁ推測の域は出ませんが。

ともあれ先物6月限は139.90の高値を付けて3月限終値139.42を越え、限月交代翌日にして限月間の窓を埋めるという快挙を成し遂げたのでありましたw
東証15時の終値は139.20、板スカスカのEV終値は139.27。LIFFE清算値は139.65ェ…。

BBが毎営業日16時頃に発表する引値(BB国債価格)は通常通り発表されました。先物を基準にカーブを引いた、それなりに納得いくプライスでした。個別ではアレな部分ももちろんあるんだけど…。

ちなみに、吹き値で現物の売りをぶつけた逞しい投資家がいたそうですが、Bidした逞しいディーラーに敬意を表しますよ。自分に値段出せっていわれても出来たかどうか…いや、やらなかっただろうな…。


尚、日銀は「次回金融政策決定会合の日程について」というリリースを発表、3/14-15の2日間にわたって開催予定だった金融政策決定会合を14日開催同日終了と変更しています。
また財務省は「国庫短期証券(第178回)の入札予定の変更」を発表し、TDB1yの入札日を3/14から3/15に変更しています。

さて来週はどうなるのか…。

2011年3月1日火曜日

公債特例法案がアレな件について

公債特例法ってなんぞ?という話はWikipedia先生にお任せするとして。
要するに国の赤字を国債発行による借金でまかなうには別途法律を作らにゃならんわけです。こうやって発行されるのが俗にいう赤字国債。

「国の借金何百兆円!」なんて騒がれるぐらい借金にまみれていながらにして更に借金を重ねなければならない日本なわけだけど、そのための公債特例法の法案が通らないんじゃないかとわたわたしている今日この頃なわけです。このあたりを巡る政治周りの話については、call_me_nots君のエントリ「公債特例法案と暫定予算」が秀逸ですので一読推奨。

で、「赤字国債が発行できなきゃ国庫短期証券を発行すればいいじゃない」なんて意見も出てるわけですな。

国庫短期証券というのは割引方式で発行される期間1年未満の国債。英語表記はtreasury discount bills。TDBなんて略して呼んでます。毎月だいたい27兆円とか発行されてます。たぶん。

こいつを赤字国債発行できない分バカスカ発行して短期のファイナンスを回していけばまぁなんとかなるんじゃないか的な議論。気持ちはわからんではないですがどんなことが起きるか妄想してみる。

発行できない赤字国債の規模にもよるだろうけど、TDBで回すとなればこいつの需給は悪化します。投資家さんはお腹いっぱい買ってたとして、残りの玉は業者が在庫として抱えることになります。オペに入れてもみんな突っ込んでくるから思うようにカネが取れない。GCにもボコボコ出てくる。

つまり、大量発行されたTDBを保有するための資金の争奪戦が始まり、資金調達コストが上昇してくわけですな。

資金調達コストが上昇すれば保有債券にもより高い利回りが求められるわけでして、TDBの利回り水準も必然的に上昇していくでしょうねぇ。利上げもなかろうに短期金利の上昇スパイラル。もしかすると入札が未達なんてことになっちゃうかも知れんよ。短期ゾーンがいつまでもこのクソ低金利なんて夢でしたねあばばばばーなんてことに…((( ;゚Д゚)))

毎朝買い現先やれやれって日銀前でデモとか起こっちゃうんじゃないだろうか。

ちなみに昨年後半、市場機能論がどうとかこうとか言われ始めたのを皮切りに、GCのレポレートが上昇、その後の債券プチバブル崩壊ならびにゲロゲロマーライオン相場突入で全員ブン投げ全力投球になったのは記憶に新しいところ。足元の金利が不安定になれば当然ながらより長いゾーンにも悪影響を与えます。

悪夢が甦りますね。えぇ、私もロングでしたからw


以上、TDBでファイナンスしちゃいなYO論を聞いて3秒で思いついた世界でした。
書きなぐりすぎてこの記事のほうがアレだわな。