2011年2月1日火曜日

リオープンと大人の事情

「格下げ?何それ、おいしいの?」

とでも言わんばかりにJGBは反発。格下げでJGBショートよりは買い向かうほうがよっぽど儲かるのはこの市場の経験則でもありまして、足下の反発はむしろ格下げがキッカケであった感すらありますがいつまでも無視するわけにゃーいかんというのはまた今度書くとして。

本日行われましたJGB10Yの入札、結局は#312のリオープン発行となりました。#312はこれで12月、1月、2月と3度にわたり発行されたことになるわけです。こういうのをトリプルイシューとか3発とか言います。

前回はリオープンを狙う向きもあるというところで終わっていましたね。

今回は格下げの反動やエジプト情勢の混乱により、JGBは売られず1.2%クーポンのリオープンとなったわけですが、場合によってはリオープンしてもらっては困るという参加者もいるのです。

通常、JGBの入札の少し前からは、その対象となる年限やその周辺の現物、あるいは先物が売られることが多いです。入札を前に投資家が買いを手控えるという投資行動もありますが、証券会社等(市場では業者と言われます)が売りを入れることが多いのです。

投資家が買いたいと思えるぐらい安くしておく、という意味と、一定の落札義務を負うプライマリーディーラー等が落札するために先にショートしておく、という意味の2つが理由。後者は、株で言えば、増資が発表された銘柄をショートしておいて増資分でカバーするようなイメージです(今は出来ないんだっけ?)。

現物をショートするとなれば当然、誰かからモノを借りてきて空売りすることになりますね。(この貸借取引のことをレポと言いますが、それはまた今度)。

入札を前に多くの業者が現物をショートしようとすれば、当然のことながら、その現物を皆が借りようとします。するとその現物の品貸料(以下:レポ料)が高騰します。それがわかっているから、ショートの対象となる現物(今回では既に発行された#312)の保有者は、いわば現物の貸し渋りを行うわけです。

どこかがガメたんだかわかりませんが、#312も1月の時点でリオープンされ通常の倍の額が発行されているにも関わらず、レポ料が高くなっていました。今日の入札で同じ#312が追加発行されショートカバーすることができれば、この債券の需給が緩むことにつながります。レポ料の高止まりもこれにより解消するわけです。

ところがですよ

もしJGBが売り込まれて#312の追加発行ではなく#313の新規発行となっていたら、#312の需給逼迫は目先解消されることなく、ショートしてる業者としては、高いレポ料を払って借り続けるかショートカバーで踏みにいくかを選択せざるを得ないわけです。

既発の銘柄のレポ料が高騰している場合、ショートしている業者としてはリオープンしてもらった方が楽になれるわけです。高いレポ料を払い続けることがなくなりますからね。たとえ、投資家ウケが期待されるクーポンアップの新回号が見込めそうでも、ヘッジうりどころか逆に買い支えることでリオープンを阻止するわけです。

これが前回の結びに書いた大人の事情ですw

まぁ今回の入札に関しては、リオープンしたところで1.25レベルの買いニーズはかなりありましたので、入札直前のレベルから投げても1毛下には買いが控えていたわけで、下値不安は乏しかったかと思います。むしろ1.20までの伸びしろが出来た分、いい位置での入札だったのではないかな。

なんて話を今日夕方にもある方と話しておりました。

あ、ちなみにTwitterにも書いたことですけど、今日の入札を「低調」と評する情報ベンダーさんの記事を多く見ましたが、んなこたぁないと思います。やや弱めな気もしますが入札のレベル感も悪くはないですし、入札結果発表後には行った仕掛け的な先物売りも数分後には押し目買いで全部踏まされてましたし。

あんな程度の動きで「財政に不安が〜〜」なんて記事が出たら、我々円債ディーラーは「まぁせいぜい言うとけ」ぐらいにしか思いません。ぷぷぷ。